割り切り

彼女は職場では「マダム」と呼ばれていた。
長く派遣社員として勤めていて、僕を含むそこらの正社員よりもキャリアがあった。さらに言えば仕事もできて、派遣社員ながらも正社員の教育係などもこなしているような女性だった。
僕より5つ年上で誰とでも会話する明るいタイプではなかったが、陰気なイメージはなかった。ただ、トウが立っていることや時として冷たく感じられることから、その美貌にもかかわらず彼女に声をかけるような勇気がある男はいなかったように思う・・・僕を除けば。
僕はそんなマダムと割り切りで寝たのだ。
僕の誘いにマダムは「援助してくれるなら寝てもいいよ」と冗談か本気か区別のつかない返事をしてきた。そこで僕は本当に結構な額を提示してマダムが逃げられないようにしたのである。「本当にお金出してくれる人がいるとは思わなかった」とマダムは笑っていた。
Twitterのエロ垢からセフレを探し出すのは不可能に近い
「あくまでも割り切りで本気にはならないけど、それでいい?」
マダムはお金を数えながらそんなことを言っていた。僕はマダムが何のことを言っているのかわからなかったが、やれるのだったら割り切りでもワンナイトラブでも何でもよかった。
セックスはどちらかと言えばマダムの方が手馴れていたと思う。もたもたしている僕に「もうちょっと右、ね」などと指示をしてくれて、僕はマダムの中で果てることができた。
しかし、マダムとはそれ1度きりだった。「本気にはならない」と予め言われていたので、再びお金を提示して割り切りを求めたことがあったが「2度目は割り切りにはならないから」とあっさりと断られた。
それは仕方なかろう。マダムとはまた仕事上の関係に戻るだけだ。ただ、僕の中では「マダムと寝ることができた」と言う自信のようなものがついたことは確かだ。割り切りとは言え、マダムをこの腕に抱いたのだ。それは誰にでも真似できることではない。そんな自信は僕の仕事の業績も上げたような気がする。
・・・もっとも、僕だけではなく部内の男性社員がみんな業績を上げているのはたまたまなのだろうか。見ると、マダムがしてやったりと言った感じで頷いていた。
女性との出会い
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